やはり夜に京之助が京の織田屋敷に来た。同時に隣の屋敷に柳生が5人入った。天井裏から京之助の姿が見えている。正式に筒井の紋を着ている。書状を織田の代官に見せている。
「はやりな」
「どうされますか?」
「織田の中も難しいのだ。弾正には明智殿が後ろ盾にいる。迂闊に訴えたら首が危ない。殿も弾正が気に入っておられる」
「明らかに謀反が明確になったら筒井が逃げ道を作りますが?」
どうも早馬で順慶の指示を取り付けたようだ。
「ただ10人ほどが限界ですが?」
「ありがたい」
「これより私が織田の代官の家来としてお傍に着きます」
「だが謀反の証拠が分かるのか?」
「はい。伏見屋敷から鉄砲が送られてきます。私の手のものが知らせてきております。連絡があれば柳生の手のものが30人裏街道をお守りします」
それほどの人数を手配したのか?これは本家の柳生が動いている。狗は天井裏を抜けると隣の屋敷に忍び込む。情けないことに狗の下忍がすべて柱に縛られている。それを確認するとまた織田屋敷の床に潜る。後は待つだけだ。気配を消して猿を見張っている。
「伏見屋敷を鉄砲が出ています。すでに京之助さまには伝えました」
足の速い鼠だ。
「すでに織田の代官は逃げたかと?」
「鼠は今から生き返るのだ。隣の屋敷の下忍たちに洞窟に戻るように伝えよ。私はしばらく死んだことにしておくのだ」
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テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学
2020.01.06 |
| Comments(0) | ファンタジー
思ったより強烈な毒だった。3日3晩狗は眠り続けた。鼠は船着場の廃屋を探して狗の介抱をした。目が覚めてもまだ体が動かない。その頃から鼠が姿を消した。狗の指示で洞窟裏の屋敷に戻ったのだ。もちろん鼠はここでは死んだことになっている。だが一人鼠と繋ぎをするのは洞窟に住んでいる年寄りだ。
5日目に鼠が戻ってきた。狗は何とか歩けるようになっている。
「揚羽が戻ってきていて頭が死んだことを報告していました。それを受けて猿が頭を宣言したそうです」
「やはりな」
「だけど洞窟の仲間が反対したので仮頭の扱いになっています。それから下忍が7人揚羽が引き連れて京に向かったようです。この中に珍しく猿が入っているそうです」
「京のどこに行った?」
「揚羽は弾正の屋敷に入ったと年寄りから繋ぎがありました。猿を探しましたがどうも織田の京屋敷に潜り込んだようです」
「不味いな?」
弾正が反逆する日に織田屋敷に火をかけるのだろう。だがここまで進んでいるので狗にの力では止めることは難しい。だが仲間の下忍を死なすわけにはいかない。狗は文を書くと京之助に届けるように鼠に依頼した。筒井順慶の名で内密に織田屋敷に知らせることと、柳生の力を借りることを頼んだ。
「伏見屋敷の鉄砲は?」
「運び出す準備が始まっています」
揚羽は唯一このことは嘘をつかなかったようだ。
鼠が出た後狗は鼠が持ってきていた虚無僧の姿で織田屋敷に急いだ。織田屋敷では黒装束に変え床に潜り込む。すでに猿たちが潜んでいるようだ。狗は気配を消すと暗闇の中で猿を探す。猿は下忍としては鍛えられていないから一番逃げやすいところにいるはずだ。やはり裏木戸に近い床下にいた。場所を確かめてから天井裏に入る。下忍の一人に近づき猿の声色で裏の屋敷に集まるように伝えた。
テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学
2020.01.05 |
| Comments(0) | ファンタジー
揚羽からの繋ぎが狗に届いた。その前に鼠を揚羽のいる女郎屋に送った。どうして狗を消そうとしているのか?やはり得意の簪を使うのか?まさか弾正の忍者を潜ませるか?やはりくノ一の技を使うだろう。約束の刻限を過ぎて鼠のいる屋根裏に潜った。
「揚羽は?」
口だけを動かす。
「風呂に入った。そこで膣に何か塗り込んでいた」
塗り込んでいた?4人姉妹の長女は三好一族を毒殺している。その妹が毒を使えないことはない。お婆も毒使いだった。狗も狐もお婆の指導を受けたが、狗は解毒を学んだだけで毒は狐が得意だ。鼠は吹き矢で毒を使う。狗は鼠の前で解毒剤を飲んだ。
「この部屋の裏の川に舟が泊まっている。私が川に飛び込んだら舟を真っ直ぐ漕いでいくのだいいな?」
鼠が屋根裏を出て行っても狗はしばらく隙間から揚羽を見ている。半刻が過ぎた。さすがに揚羽の苛立ちが感じられる。揚羽は元々気性の激しい女なのだ。狗はゆっくりと天井から下りる。
「京に入る日が決まりました」
「誰から?」
「弾正の京の家老が私を抱きに来ます。でもお頭にも抱いてほしいのです。お頭の嫌いな簪は外しています」
確かに簪を外している。抱かない限り京に入る日を言わないつもりだ。いやまだ日は定まっていないはずだ。揚羽はもう全裸になって仰向けに足を拡げて寝ている。狗は素早く膣と尻の穴を探る。揚羽が笑ったようだ。臆病者と見られているのだ。突き立ったものを押し入れる。膣が締め付けて来る。
「伏見の鉄砲が運び込まれた日」
その声を聞いて同時に出した。立ち上がろうとしてよろめいた。やはり強烈な毒だ。どこに隠し持っていたのか短刀が背中に突き刺さったような気がした。だがほとんど同時に格子を突き破って川に飛び込んだ。川に落ちた直ぐ後その上を舟が通り過ぎる。
テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学
2020.01.04 |
| Comments(0) | ファンタジー
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