天海の陰謀10

 江戸から高虎が戻ってきた。さらに津城を加増された。家老より先に狗が高虎の部屋に呼ばれた。
「おめでとうございます」
「ああ、やはり狗の言った通り天海殿を見ながら働いた。天海殿は今までの家康殿の方針とは違って、積極的に秀忠殿を立て次の時代をにらんでいるように思う」
 高虎もツボを心得てきたようだ。それに天海も影武者家康を高虎が薄々悟りながら自分に付いてくることを感じている。
「次は臣下の動きに注意が要ります」
「外様と同じように臣下も今や整理期に入ったようです。家康付と秀忠付を敢えてぶつけるでしょう」
「どちらに付いたらいいのだ?」
「どちらにも付かず天海を見ていることです。とくに家康の下で力を持ったものをこの際整理すると思います。服部と柳生もそうです。その仕上げが家康殿の死去になります」
 今や影武者家康は危険な存在になりつつある。
「それと送られてきた家老と指南役には注意してください。津城には?」
「2日後に行く。また蝙蝠を借りる」
 話が済むと待っていたように家老が指南役を連れて部屋に入った。天井裏にはムササビがいる。狗は城を出ると服部屋の道場に出る。蝙蝠が汗を流している。
「ご苦労」
「ムササビが揚羽と戦ったようですね?」
「村田与三を見たか?」
「ええ先ほど城の道場で見ました。真剣で立ち合うのが怖いですね?」
「家康の様子はどうだった?」
「何度も倒れられて」
「そろそろ天海が仕上げに入るな?」
「私もそう思われます」
「津城にはここから5人を選んで連れて行け」
 蝙蝠は人の心を読むのに長けている忍者だ。











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2017.06.24 | | Comments(0) | ファンタジー

天海の陰謀9

 天海に言われたのか家老は師範代に柳生の村田与三と言う若者を入れた。彼は下忍を数人連れて伊賀上野城に入った。 狗は道場では練習することはない。まだ若いが剣筋が厳しい。真剣で立ち合うと難敵になる。宗矩と天海の間で綱引きがあるのだろう。今までのように服部一点張りではなさそうだ。
 この村田与三のことも文に入れて先に下忍を京之助の元に走らせた。その返事が狐の元にいる狗にもたらされた。狐は薬売りを一手に束ねている。
 すでに姫路を出て岡山に向かったと言う。姫路では修験者一団に襲われたと書いてある。だが京之助と狼では負けることはないだろう。すでに噂が振りまかれており幕府の耳にも入っているようだ。村田与三については狼が詳しい。兄弟子として10年ほど一緒だったが剣腕はとくに暗殺剣が凄く、宗矩が今は京之助の代わりとして使っているようだ。
「新しい隠れ家はどうだ?」
「しばらく服部の姿はないそうだわ。次の逃げ道としてそろりはあの狗が行った小さな港を考えているようだわ」
「そろりは逃げることばかりだな?」
「でも徳川の世だからそれくらい用心してもいいくらいよ。それで資金の依頼があったの」
「何をする?」
「あそこの港にあった材木の倉庫があったの覚えている?そろりが調べたら堺の問屋だったけど潰れたようで残った番頭が運営してきたみたい。それを買い取る交渉をしている。廻船が2隻あるわ」
「海賊にでもなるか?」
「高虎殿もいつまで徳川で生き残れるかしら?」
 確かに今の外様の生き残りは厳しい。すでに天海の手で有力外様大名は消されている。
「家老を引き込めないか?」
「女に目がないようよ。昔みたいに私がやろうか?」
「駄目だ」
「冗談よ。すでにくノ一を入れた」





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2017.06.23 | | Comments(0) | ファンタジー

天海の陰謀8

 伊賀上野城に戻りさっそくムササビを小姓の中に入れた。蝙蝠の代行を命じた。鼠は狐の元に行きくノ一を貰う。1日違いで天海が僧正として表から城にやってきた。天井裏には服部と柳生が潜り込んでいる。天海にそれぞれ下忍を張り付かせているのだ。揚羽は天海の小姓として座っている。
 天海は家老を下座に座らせて、家老は高虎の側近の狗を呼びつけた。
「いつぞやぶりだな?」
「はああ」
「どこにおった?」
「夏の陣以降四国に隠密で入っておりました」
「夏の陣は?」
「高虎殿の陣に」
「見たような気がするが?」
 天海の目が睨んでいる。
「天海殿は家康殿の側におられたとか?」
 一瞬揚羽が口針を吹いた。狗は微かに体をずらせ指先ではなく手の甲に受けた。ここなら回りが遅い。半刻の間冷や汗をかいて外に出た。もし逃げればそこで忍者だと攻める気だったのだ。だから敢えて受けた。廊下を出てムササビに影になれと伝えた。その足で裏庭に出る。早くも手裏剣が飛んでくる。狗は眩暈で倒れ込んだ。
 飛び降りてきた揚羽が殺す勢いで剣を突き付ける。そこに黒装束のムササビがその剣を払いのける。狗は石垣に仰向けに倒れる。だがしっかりと見つめている。もしムササビがやられるようなら揚羽を切り捨てる。だがなかなかの戦いだ。2合の打ち合いで揚羽が飛び去る。
「私を背負って行け」
「はい。すいません。あれが精一杯です。強いです」
「あれでいい。あれが揚羽だ。これでムササビが狗だ」











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2017.06.22 | | Comments(0) | ファンタジー

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『けもの』を書き始めて長い中断が訪れました。半年ほど書けなくなって遂には『夢の橋』を書き始めてそれを書き上げてやっとここに戻ってきました。

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