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反逆7

 やはり夜に京之助が京の織田屋敷に来た。同時に隣の屋敷に柳生が5人入った。天井裏から京之助の姿が見えている。正式に筒井の紋を着ている。書状を織田の代官に見せている。
「はやりな」
「どうされますか?」
「織田の中も難しいのだ。弾正には明智殿が後ろ盾にいる。迂闊に訴えたら首が危ない。殿も弾正が気に入っておられる」
「明らかに謀反が明確になったら筒井が逃げ道を作りますが?」
 どうも早馬で順慶の指示を取り付けたようだ。
「ただ10人ほどが限界ですが?」
「ありがたい」
「これより私が織田の代官の家来としてお傍に着きます」
「だが謀反の証拠が分かるのか?」
「はい。伏見屋敷から鉄砲が送られてきます。私の手のものが知らせてきております。連絡があれば柳生の手のものが30人裏街道をお守りします」
 それほどの人数を手配したのか?これは本家の柳生が動いている。狗は天井裏を抜けると隣の屋敷に忍び込む。情けないことに狗の下忍がすべて柱に縛られている。それを確認するとまた織田屋敷の床に潜る。後は待つだけだ。気配を消して猿を見張っている。
「伏見屋敷を鉄砲が出ています。すでに京之助さまには伝えました」
 足の速い鼠だ。
「すでに織田の代官は逃げたかと?」
「鼠は今から生き返るのだ。隣の屋敷の下忍たちに洞窟に戻るように伝えよ。私はしばらく死んだことにしておくのだ」








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テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

2020.01.06 | | Comments(0) | ファンタジー

反逆6

 思ったより強烈な毒だった。3日3晩狗は眠り続けた。鼠は船着場の廃屋を探して狗の介抱をした。目が覚めてもまだ体が動かない。その頃から鼠が姿を消した。狗の指示で洞窟裏の屋敷に戻ったのだ。もちろん鼠はここでは死んだことになっている。だが一人鼠と繋ぎをするのは洞窟に住んでいる年寄りだ。
 5日目に鼠が戻ってきた。狗は何とか歩けるようになっている。
「揚羽が戻ってきていて頭が死んだことを報告していました。それを受けて猿が頭を宣言したそうです」
「やはりな」
「だけど洞窟の仲間が反対したので仮頭の扱いになっています。それから下忍が7人揚羽が引き連れて京に向かったようです。この中に珍しく猿が入っているそうです」
「京のどこに行った?」
「揚羽は弾正の屋敷に入ったと年寄りから繋ぎがありました。猿を探しましたがどうも織田の京屋敷に潜り込んだようです」
「不味いな?」
 弾正が反逆する日に織田屋敷に火をかけるのだろう。だがここまで進んでいるので狗にの力では止めることは難しい。だが仲間の下忍を死なすわけにはいかない。狗は文を書くと京之助に届けるように鼠に依頼した。筒井順慶の名で内密に織田屋敷に知らせることと、柳生の力を借りることを頼んだ。
「伏見屋敷の鉄砲は?」
「運び出す準備が始まっています」
 揚羽は唯一このことは嘘をつかなかったようだ。
 鼠が出た後狗は鼠が持ってきていた虚無僧の姿で織田屋敷に急いだ。織田屋敷では黒装束に変え床に潜り込む。すでに猿たちが潜んでいるようだ。狗は気配を消すと暗闇の中で猿を探す。猿は下忍としては鍛えられていないから一番逃げやすいところにいるはずだ。やはり裏木戸に近い床下にいた。場所を確かめてから天井裏に入る。下忍の一人に近づき猿の声色で裏の屋敷に集まるように伝えた。




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2020.01.05 | | Comments(0) | ファンタジー

反逆5

 揚羽からの繋ぎが狗に届いた。その前に鼠を揚羽のいる女郎屋に送った。どうして狗を消そうとしているのか?やはり得意の簪を使うのか?まさか弾正の忍者を潜ませるか?やはりくノ一の技を使うだろう。約束の刻限を過ぎて鼠のいる屋根裏に潜った。
「揚羽は?」
 口だけを動かす。
「風呂に入った。そこで膣に何か塗り込んでいた」
 塗り込んでいた?4人姉妹の長女は三好一族を毒殺している。その妹が毒を使えないことはない。お婆も毒使いだった。狗も狐もお婆の指導を受けたが、狗は解毒を学んだだけで毒は狐が得意だ。鼠は吹き矢で毒を使う。狗は鼠の前で解毒剤を飲んだ。
「この部屋の裏の川に舟が泊まっている。私が川に飛び込んだら舟を真っ直ぐ漕いでいくのだいいな?」
 鼠が屋根裏を出て行っても狗はしばらく隙間から揚羽を見ている。半刻が過ぎた。さすがに揚羽の苛立ちが感じられる。揚羽は元々気性の激しい女なのだ。狗はゆっくりと天井から下りる。
「京に入る日が決まりました」
「誰から?」
「弾正の京の家老が私を抱きに来ます。でもお頭にも抱いてほしいのです。お頭の嫌いな簪は外しています」
 確かに簪を外している。抱かない限り京に入る日を言わないつもりだ。いやまだ日は定まっていないはずだ。揚羽はもう全裸になって仰向けに足を拡げて寝ている。狗は素早く膣と尻の穴を探る。揚羽が笑ったようだ。臆病者と見られているのだ。突き立ったものを押し入れる。膣が締め付けて来る。
「伏見の鉄砲が運び込まれた日」
 その声を聞いて同時に出した。立ち上がろうとしてよろめいた。やはり強烈な毒だ。どこに隠し持っていたのか短刀が背中に突き刺さったような気がした。だがほとんど同時に格子を突き破って川に飛び込んだ。川に落ちた直ぐ後その上を舟が通り過ぎる。








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2020.01.04 | | Comments(0) | ファンタジー

反逆4

 狗の忍者が暗殺を請け負う力はない。精々密偵だ。洞窟の裏屋敷から狗の泊まっている旅籠に繋ぎがあった。猿が送ってきた繋ぎだ。服部の調査の依頼だ。これは時々受けている豪族からだ。だがこの時期にこんな依頼が来るのはおかしい。それで下忍を3人をまず京まで来るように指示した。猿も揚羽も動き出した感がある。
「伏見の屋敷に大和の兵が1千入っていますが、堺から鉄砲が3百艇運び込まれました」
 怪我をしたが鼠は伏見を調査してきた。今日は弾正の部屋に坊主が頭巾をして座っている。弾正の横には娘が座っている。どうも揚羽の変装のようだ。坊主は布に捲いた手紙を渡した。弾正が黙って読んでいる。
「決行の日に京に3千の僧兵を送ると言われています」
 どうも本願寺も巻き込んだようだ。
「決行の日は?」
「赤松が六角と交渉中で時間がかかっているのだ」
 実は赤松と六角は別々に弾正に交渉をしに来ている。主導権争いだ。
「連絡は?」
「この女が走る」
 会談が終わると揚羽は頭巾を被って色町に戻る。狗は揚羽の後をつけて置き屋に入る。ここで揚羽は頭巾を取ると女郎の顔になっている。彼女に部屋に入るとまったく同じ顔のくノ一が座っている。
「猿から繋ぎです。そろそろ狗を消せと」
「分かった」
と言うと部屋を出て庭先にいる庭師に声をかける。これは繋ぎの年寄りだ。
「狗を至急に呼んで。弾正の反逆の日が分かったと伝えて」
 狗を遂に消すことにしたようだ。この年寄りは弾正ところにいる年寄りと連絡を取り合っている。そこから鼠に伝わるようになっている。その時に思い付いたことがある。









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2020.01.03 | | Comments(0) | ファンタジー

反逆3

 京之助を通じて順慶に弾正謀反の報告を送った。順慶は最近は秀吉に近づいていて彼に密やかに伝えたようだ。揚羽から弾正の報告があるかと思っていたがやはり報告はない。それより柘植が京に忍者を送ってきて弾正の屋敷の警備を行うとの報告があった。それで狗が調べて見たら20人ほどが屋敷を警備していた。
 鼠から揚羽が弾正の屋敷に呼ばれたと報告があった。日が暮れたのを見計らって屋敷に潜る。屋敷の見取り図は密偵の女中から貰っている。庭の奥に鼠がいる。弾正の部屋に入っていると言う。こういう潜入の時は入れている密偵は使わない。下忍は外の逃げ道を確保している。
 天井裏に入ると手裏剣が無数に飛んでくる。やはり誘き出されたのだ。5人がいる。手裏剣は柘植のものだ。狗は不利を感じて煙幕を捲く。入ってきたところから大屋根に登る。ここにも5人がいる。すぐに天井裏からも出てくる。四方を囲まれた。黒装束の一人が鋭い突きを入れてくる。これは揚羽だ。
 その時大屋根に手投げ弾が投げ込まれる。この音を聞いた途端空を飛んでいる。投げ込んだ大木にいる鼠が揚羽の投げた簪を受けたのか下に落ちた。
 庭からも忍者が出てくる。狗の下忍が素早く鼠を抱えていく。飛び出してきた下忍に京之助の他柳生の侍が3人剣を振っている。剣の戦いでは柳生にはかなわない。狗が着地したところに下忍が切り込んでくる。
「いつものところに来い」
 京之助が2人を鮮やかに切ると道に走り出す。狗も剣を躱したはずみで反対側に走る。大屋根にいた揚羽たちが塀から出てくるのが見える。辻を曲がると木戸が開いた。年寄りの顔が覗いている。
「この庭を抜けたら寺に行けます」
 瞬間に木戸が閉まる。寺に行くと庫裡に鼠が寝かされている。
「心の臓を少し外れていますがなかなかの腕です」
 それを見届けてから居酒屋に行く。すでに京之助が1本の徳利を空けている。
「警戒が厳しくなったな?だがどうしても京を占拠する日を知りたい」
「筒井はどうするのですか?」
「まず取られた出城を奪い返す予定た。とくに裏門は即座に塞ぐ予定だ。この裏門は柳生が担当する。




 



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2020.01.02 | | Comments(0) | ファンタジー

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hamham868611

Author:hamham868611
『けもの』を書き始めて長い中断が訪れました。半年ほど書けなくなって遂には『夢の橋』を書き始めてそれを書き上げてやっとここに戻ってきました。

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