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生い立ち3

 狗が10歳になった時、抜け忍狩りがあり伊賀の服部の忍者が大勢入ってきた。抜け忍の夫婦が地蔵小屋から谷に入った。お婆は抜け忍をこちらの手で殺して小屋に捨てると指示した。だが獅子が反対して剣の弟子を5人連れてこの抜け忍をさらに森の奥の道に案内することになった。
 だが服部の若であった半蔵がそれを見抜いて手勢30人で抜け忍を谷を取り囲んだ。半蔵はその時15歳、まだ頭角を現していない頃だった。抜け忍を導いた獅子たちもその輪の中に囲まれた。まず抜け忍の女が手裏剣の生贄になった。これに獅子は逆上して切り込んだ。踏み込んだ2人が下忍に切られ抜け忍の男も半蔵に切り殺された。狗も2人の下忍を相手に肩を切りつけられた。
 この時もくもくと白い煙が噴き出した。これはお婆の毒煙りだ。狗は仲間の2人を引っ張り煙の反対側に逃げる。獅子が3人相手に追いつめられている。お婆の唸り声がする。煙が生き物のように取り囲んでくる。この煙には這って風上に向かえ。獅子も覚えていたのか地面に伏せている。下忍がバタバタと倒れていく。お婆は煙を操るように煙の外側を走り回る。半蔵の姿も消えた。
 狗は2人を連れて外側に出た。そこに獅子がようやく顔を出した。その後ろをお婆が切りつけてくる半蔵と戦っている。だがお婆は走ることしか武器がない。危ないとみるとわざと煙の中に入る。いくら毒に強いと言っても限界だ。半蔵は口に布を含んでいる。遂に半蔵の手裏剣がお婆の胸に突き刺さる。だがお婆は走り続けている。
 獅子が狗達を連れて獣道を反対に走る。お婆も最後は反対側に走るだろう。洞窟を見つけられればお終いだ。3刻は走り続けただろう。ようやく夜明けだ。これでも洞窟にはまだ1刻はかかる。
「お婆だ!」
 まず狗が見つけた。お婆も走り続けたようだ。回り道を反対周りに湧き水の流れに倒れている。狗が抱えるがすでに息はない。それを獅子が抱きかかえる。
「儂が悪かった」
 抱えながら何度も言う。狗は母を亡くしたような悲しみにとらわれた。お婆の墓は洞窟の上の崖に作った。この日から服部は何度もこの周辺に現れるようになった。






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テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

2019.12.03 | | Comments(0) | ファンタジー

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Author:hamham868611
『けもの』を書き始めて長い中断が訪れました。半年ほど書けなくなって遂には『夢の橋』を書き始めてそれを書き上げてやっとここに戻ってきました。

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